【発表】UNECE主催 国際会議「Expert Meeting on Statistical Data Confidentiality」にて発表
2025年10月15~17日に、スペイン・

左から、南 和宏(研究代表者)、菊池 陽、加藤 駿典、伊藤 伸介(研究分担者)
本会議は、公的統計の分野における統計データの機密保護(SDC:Statistical Disclosure Control)と利活用をテーマに、研究者と実務家が最新の研究成果や実践事例を共有・議論する国際的なフォーラムです。1999 年の初回開催以来、隔年で開催されており、今回で第 14 回を迎えました。
参加者は、各国の統計局や行政機関の統計部門、国際機関、研究機関、大学などの専門家・研究者が中心で、今年は約 130 名が参加しました。発表内容が各国の統計機関の業務や制度設計に反映されることも多く、学術研究と実務をつなぐ重要な国際会議として高く評価されています。

口頭発表では、伊藤伸介(中央大学)、寺田雅之(京都橘大学)、加藤駿典(統計センター)、松井秀俊(滋賀大学)の4名による共著論文について、加藤が発表を行いました。
本論文では、日本の2020年国勢調査から作成される地域単位の統計表を対象に、差分プライバシーに基づく複数のノイズ付加手法を比較検討しています。実証実験では、各手法により作成した統計表の有用性を評価し、米国の国勢調査で採用されている方式が、日本の国勢調査にそのまま適用した場合には必ずしも有効でない可能性があることを報告しました。
この研究は、統計データの機密性を確保しつつ有用性を維持するための手法設計に関して、今後の公的統計における秘匿処理の高度化に貢献することが期待される成果です。

ポスター発表では、菊池陽、南和宏(情報・システム研究機構)の共同研究について、菊池が発表を行いました。
本研究では、匿名化データの代替手段としての合成データ提供の可能性を検討し、差分プライバシーの要件を満たす合成データを対象に、昨年度開催されたPWS Cup2024 匿名化・属性推定コンテストのルールに基づいて安全性と有用性の実証評価を行いました。
その結果、合成データを活用した新たなデータ提供手法の有効性と課題を明らかにし、今後の公的統計における安全なデータ利活用の可能性を示しました。
私たちのプロジェクトでも、実社会で活用可能な SDC 技術の開発を進めており、本会議はその成果を国際的に発信し、各国の専門家との意見交換を通じて多くの知見と刺激を得る貴重な機会となりました。
今回の経験を活かし、今後も統計データの安全で効果的な利活用に貢献できる研究を進めていきます。