【発表】国際会議「Privacy in Statistical Databases 2026(PSD 2026)」にて研究成果を発表
2026年9月30日~10月2日に、スペイン・カディスで開催された国際会議「Privacy in Statistical Databases 2026(PSD 2026)」において、SDC4Societyプロジェクトに関連する3件の研究成果を発表しました。
Privacy in Statistical Databases(PSD)は、統計データのプライバシー保護をテーマとする国際会議です。統計的開示抑制(SDC:Statistical Disclosure Control)をはじめ、匿名化、差分プライバシー、合成データ、開示リスク評価、機械学習とプライバシーなど、データの有用性を維持しながらプライバシーを保護するための幅広い研究について議論されています。今回の特徴の一つとして、AIエージェントによる再識別など、AIの進展によってこれまでのプライバシー保護の前提が変わり得ることに着目した研究が見られました。
菊池陽、小野元、南和宏による研究「Patterns Without Source: A Meta-Analysis of PWS Cup 2025」では、匿名化技術を競う対戦型コンテスト「PWS Cup 2025」を対象に、各チームの戦略や、採用されたプライバシー保護技術の有効性を分析しました。

PWS Cupは、データの有用性とプライバシー保護の両立を実践的に探る場です。本研究では、コンテストで得られた結果をもとに、プライバシーを保護したデータの生成・評価に関する傾向や課題を検討しました。
Chanh Minh Tran、南和宏による研究「On Explainability of Data Utility Metrics on Machine Learning Performance and Vulnerability of k-Anonymization Algorithms」では、k-匿名化されたデータについて、データの有用性を評価する指標と、機械学習の性能や再識別リスクとの関係を分析しました。

匿名データの利活用には、プライバシーの保護に加え、分析や機械学習に活用できるだけの有用性を維持することも重要です。本研究では、匿名データの有用性を測る汎用的な指標が、実際の機械学習モデルの性能や匿名データの脆弱性をどの程度説明できるかについて検討しました。
伊藤伸介、寺田雅之、加藤駿典、松井秀俊、南和宏による研究「Evaluating the Usability of Japanese Population Census Data Created Using Differential Privacy —An Approach Based on Ecological Regression—」では、日本の国勢調査データに差分プライバシーを適用した場合のデータの有用性について、生態学的回帰を用いて評価しました。

差分プライバシーでは、統計表などにノイズを加えることで個人のプライバシーを保護しますが、データの有用性が損なわれるという課題があります。本研究では、日本の国勢調査データを用いて差分プライバシーを満たす統計表を作成し、データ分析で広く用いられる回帰分析を通じて、その有用性を評価しました。具体的には、市区町村レベルで集計したデータを用い、ノイズ付加前後のデータから推定した回帰係数を比較することで、その安定性を検証しました。
SDC4Societyでは、データの安全性を確保しながら、その有用性を最大限に活かすための統計的開示抑制(SDC)技術やプライバシー保護技術の研究開発を進めています。
今回の国際会議での発表や研究者との意見交換を通じて得られた知見を活かし、引き続き国際的な連携を推進しながら、安全なデータ利活用の実現に向けた研究を進めていきます。